そんなふうにはできてない

日本にひとつくらい、自動車通行禁止の村があってもいいと思う。
人間は、自分を轢き殺す力を持った金属の塊が我が物顔で飛び交う世界で生きるようにはできてない。でも、その金属の塊がないと不便だって?人間は、そんなに便利な世界で生きるようにはできてない。

日本にひとつくらい、貨幣の流通を拒否する村があってもいいと思う。
人間は、貨幣なんていうフィクションの世界に生きるようにはできてない。でもやっぱりお金がほしい?それなら、夜空の星が新しい貨幣だってことにしたらいい。

日本にひとつくらい、電気照明禁止の村があってもいいと思う。
人間は、暗闇への恐怖なしに生きるようにはできてない。天狗や化け狐や雪女が締め出された世界に生まれる新しい化け物なんかと生きていくようにはできてない。

和漢三才図会

300年前の百科事典「和漢三才図会」をたまにあてもなく開いてみる。いいかげんな章立てのもと、おなじみの狸や狐と同列に並んでいる「川太郎」やら「水虎」やら、よくわからない生きものたち。

下品な資本主義の化け物が彼らを追い出しちゃった今、川太郎が自由に闊歩する余地のあった豊かな昔をおもう。
こんな生きものは妖怪で、妖怪は迷信だって?
妖怪が「いる」ことを証明するのは難しいけれど、「いない」ことを証明するのはもっと難しい。